なぜ今、麻辣湯は大行列なのか?心理学で紐解く、顧客を”当事者”に変えるWeb戦略

なぜ今、麻辣湯は大行列なのか?心理学で紐解く、顧客を”当事者”に変えるWeb戦略

渋谷や新宿の街を歩いていると、ある異様な光景が目に飛び込んできます。まるでカフェのようにお洒落で明るいガラス張りの店の前に、若い世代を中心とした数十人の大行列。彼らのお目当ては、今あちこちで爆発的なブームになっている「麻辣湯(マーラータン)」です。

これを横目に、「ああまたいつもの若者のトレンドか」と通り過ぎてしまうのは、マーケティングの視点として非常にもったいない。なぜなら、あの行列の裏側にはこれからのSNS時代を生き抜くための人間の行動心理を巧みに操る「ある仕掛け」が凝縮されているからです。

彼らはテレビCMを見たわけでも、ネットのバナー広告をクリックしたわけでもありません。にもかかわらず、なぜあの場所に吸い寄せられていくのか。

私は、あの行列を作っているのは”料理ではなく、顧客を”当事者”に変える設計そのものにあると考えています。

では、その「当事者」とは一体どういう状態なのでしょうか。まずはあの場所で「本当に売っているモノ」から、一緒に紐解いてみましょう。

目次

売っているのは麺ではない?「私だけの一杯」という体験の正体

私は、麻辣湯の人気の理由は「美味しいから」「映えるから」だけではないと思っています。こんなことを言ったら怒られるかもしれませんが、もし本当に味だけで勝負するなら、世の中にはもっと美味しいラーメン屋も、中華料理店もたくさんあると思います。では、なぜあそこまでSNSで広がるのでしょうか。

それは、お客さん自身が「料理を作るプロセス」に参加しているからではないかと思うのです。

トングを持って、

今日は何を入れようかな

春雨を多めにしよう

辛さは2辛くらいかな

と、自分で組み立てる。あれはきっと、“料理を買っている”のではなく、“完成までの体験”を楽しんでいるのです。

しかも、その完成品は世界に一つだけ。

だから写真を撮りたくなる。
だから友達に見せたくなる。
だからSNSへ投稿したくなる。

じつはこれ、心理学で「イケア効果」と呼ばれる現象そのものです。人は、自分で組み立てたり、選んだり、少しでも手を加えたものに対して、驚くほど愛着を持つことが知られています。自分が主体的に関わって作ったものだからこそ、そこには愛着と満足感が生まれる。だから写真を撮りたくなるし、友達に見せたくなるし、SNSでのシェア(投稿)に直結するのです。

つまり麻辣湯が売っているモノは「おしゃれな辛い麺」ではなく、「私だけの一杯を作った」という体験そのものなのではないでしょうか。「これ私が選んだんだよ」というストーリーまで含めて商品になっているのです。

お店側が必死に広告費を払ってアピールをしなくても、お客様自身がその体験をSNSで語り始める。それを見て、また新しい客が店舗に食べに行く。この口コミの無限ループこそが、あの途切れない大行列を生み出している本当のカラクリだと私は睨んでいます。

これまでの公式が通用しない「AIDMAの崩壊」と「VISASのループ」

このお洒落な店内で行列の主役たちがやっていることを観察していると、私たちがこれまでマーケティングの教科書で習ってきた「ある公式」が、完全に崩壊していることに気づかされます。

それが、100年前に生まれた購買モデル「AIDMA(アイドマ)」です。「まずは広告を打って認知させ(Attention)、興味を持たせ(Interest)、欲しいと思わせて(Desire)、記憶させ(Memory)、行動させる(Action)」というお決まりの流れですね。

この古い感覚のまま、「認知を広げるためにバナー広告をたくさんばら撒こう!」と予算を投じている会社は、今、ことごとく費用を浪費する沼にハマっています。

では、今のSNS時代、麻辣湯のブームは何のモデルで動いているのか。それが、VISAS(ヴィサス)と呼ばれる現代の消費行動サイクルです。

V(Viral:口コミ):SNSで誰かが食べている動画が流れてくる
I(Influence:影響):それを見た人が「美味そう、お洒落だな」と影響を受ける
S(Sympathy:共感):お店の宣伝ではない生の声に共感する
A(Action:行動):実際にお店に行って食べる
S(Share:共有):食べた人が、またSNSに投稿して最初の「V」に戻る

麻辣湯というビジネスが凄まじいのは、最後の「S(共有)」、つまり「客が勝手に口コミ(UGC:ユーザー生成コンテンツ)を投稿したくなる仕組み」が、商品設計の段階で完璧に組み込まれている点にあります。

ボウルとトングを持って、何十種類もの具材から自分の好きなものをカチャカチャと選ぶワクワク感。辛さのレベルを自分で決めるカスタマイズ性。出来上がった「私だけの麻辣湯」のビジュアル。これらすべてが、スマホを構えて動画を撮り、誰かに「共有」したくなる強烈な動機(フック)になっています。

では、なぜ企業が何百万円も広告費をかけたメッセージよりも、一般のお客さんが投稿した何気ない写真や感想のほうが、人を動かしてしまうのか。

ここに、心理学でいう「ウィンザー効果」の本質があります。人は、売り手本人が語る「うちの商品は最高です」という言葉よりも、利害関係のない第三者の「これ、ガチで良かったわ」という声に無意識のうちに警戒の壁を解いてしまう性質があります。広告で無理やり見せられる情報よりも、他人のリアルな体験のほうが、現代の消費者にとってはよっぽど価値があるということです。

つまり、企業が広告費で認知を買う時代から、お客様自身が語ってくれるストーリーが最も信頼される広告になる時代へ変わってきているのです。

あなたのサイトにトングはあるだろうか?

ここまで読んで、「それは飲食店だからできる話でしょ」と思われた方もいるかもしれません。

でも、私はそうは思いません。顧客を”当事者”へ変える設計は、あらゆるビジネスに応用できます。

なぜなら、人が「自分も参加した」と感じることで愛着が生まれる心理は、商品ではなく人間そのものの性質だからです。ホームページ制作でも、Web広告でも、製造業でも、士業でも、本質はまったく同じはずです。

「なるほど。じゃあ、顧客が満足したタイミングでGoogleのクチコミをお願いしよう。」もしあなたがここまで読んでそう考えたとしたら、それはまだ麻辣湯の本質を半分しか理解できていません。

ここで勘違いしてほしくないのは、「口コミを書いてもらうこと」が目的ではないということです。

私たちが学ぶべきなのは、後からレビューを回収するテクニックではなく、顧客が主体的に参加したくなる”体験そのもの”を設計することです。言い換えると、自社のサービスを提供するプロセスの中に、顧客が「自分も一緒に作った」と感じられる余白をどう組み込むか。そこにこそ、UGCが自然と生まれる本当の理由があります。

さて。ここまでこの記事内で何度も「トング」「トング」と言って来ましたが、ここからはこの考え方を勝手に「トング理論」と呼ぶことにします。(ネーミングセンスへの異論は受け付けません。笑)

話を戻しましょう。この「トング理論」をBtoBのビジネスで実現するには、どうすればいいのでしょうか。

ポイントは、お客様を「提案を受ける人」から、「提案を一緒に作る人」へ変えることです。

例えば、多くの企業では、ホームページから問い合わせが来ると、営業担当が裏側で提案書や見積書を作り、「こちらが最適なプランです」と提示します。

もちろん悪いことではありません。しかし、この進め方では、お客様は最後まで”受け身の観客”のままです。そうではなく、商談前のホームページやヒアリングの段階から、お客様自身に課題を選び、考え、意思決定に参加してもらうプロセスを組み込むのです。

顧客に「トング」を持たせるにはどうすればいいか?

明日から自社のホームページに実装できる「顧客を当事者に変えるWeb設計」の3ステップをお伝えします。

ステップ1:ただの「問い合わせフォーム」を「選択式のセルフオーダー」に変える

名前とメールアドレス、自由記入のテキストボックスがあるだけのフォームは、顧客にただの「作業」をさせられている気分にさせます。ここを、麻辣湯の具材選びのように変えるのです。

  • あなたが今、一番頭を悩ませている課題はどれですか?(Web集客 / 採用 / 社内DX…)
  • 現在の月間予算のイメージはどのあたりですか?

このように、顧客が自分の現状を選択していくステップを挟むだけで、顧客は「自分のためのプランを今、自分で組み立てている」という主体的コミットのスイッチが入ります。

ステップ2:提案書の前に「顧客と一緒に埋めるチェックシート」をWebで渡す

問い合わせがあった後、すぐに営業マンが作った完璧な提案書を送りつけてはいけません。セルフオーダーで選んでもらった内容をベースに、

〇〇様が選んだ要素をまとめると、現在の課題マップはこうなりました。ここの『空欄』になっている部分について、次のオンライン相談で一緒に埋めて、1つのロードマップを完成させませんか?

と、Web上で部分的な診断レポートを自動発行して手渡すのです。顧客は「自分の手で完成させた」という心理になり、商談への前のめり感が激変します。

ステップ3:その「成功ストーリー」を顧客自身の言葉で語ってもらう

プロジェクトが成功した最後のミーティングやメールで、このように語りかけてみましょう。

〇〇さん、最初の段階で、〇〇さんご自身が『ウチの課題はここだ』と主体的に選んでスタートしてくださったからこそ、今回の成功がありましたね。ぜひ、〇〇さんが主役として進められたこの解決のプロセスを、率直な感想としてWebのレビューやアンケートに書き込んでいただけませんか? 『最初はここを選んでスタートし、一緒にこうやって解決した』という〇〇さんのリアルなストーリーが、同じように悩む他の企業の何よりのヒントになります

ただ「感想を書いてください」と丸投げされると「良かったです」の一言で終わってしまいますが、「あなたが主役として関わったストーリーを教えてほしい」と言葉をかけると、顧客は喜んで「最初はサイトの選択肢を見てハッとした。そこから一緒に……」と、熱量の高い具体的なエピソードを紡いでくれます。

こうして生まれた「お客様自身のリアルな成功ストーリー」こそが、他社がいくら広告費を積んでも絶対に手に入らない、今の時代に最も信頼される本物の口コミになっていくのです。

まとめ:顧客を「観客」から「当事者」へ

これからは、広告費を払って無理やり露出を増やしたり、後から必死に「口コミを集める」時代ではありません。「顧客が自ら、誰かに語りたくてたまらなくなる体験」を、ハナからビジネスの構造の中に設計しておく時代なのです。

大切なのは、顧客が皆さんの会社と出会いサービスを体験していくプロセスの中で、どれだけ「主体的になれるか」という体験の設計です。

単に情報を置いておくだけのWebサイトから、顧客が自ら巻き込まれ、感動を周囲に広げてくれる強力な「資産」へ。その構造の転換を、私たちと一緒に始めてみませんか。

この記事を読んだ後に考えてみたい3つの質問

まずは明日、自社のホームページや、普段の営業プロセスの第1歩を見つめ直して、少し考えてみてください。

皆さんのホームページや日々の接客は、訪れた顧客が「ただ流し見するだけの観客」になっていませんか?

自社の商品やサービスを利用したお客様が、
一番「本当に助かった、嬉しい」と感じてくれる感動の瞬間はどこにありますか?

もしお客様が満足してくれたその瞬間に「リアルな声をWebに届けてもらう工夫」を
1つだけ始めるとしたら、どんな仕組みが考えられそうですか?

とはいえ、自社のビジネスにおける「トング(顧客が主体的になれる余白)」がどこにあるのか、客観的に見つけ出すのは簡単ではありません。

私たちWebminare(ウェブミナーレ)は、ホームページを制作する会社ではありません。企業の強みや顧客心理を徹底的に分析し、問い合わせ導線から営業プロセスに至るまでの「トング理論(当事者化の仕組み)」を顧客と一緒に創り上げるパートナーです。

「ウチのサイトなら、どんなトングを持たせられるだろう?」と気になった方は、まずは私たちのWebサイトの“トング”を体験する感覚で、お気軽にご相談ください。

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この記事を書いた人

株式会社Office Webminare 代表取締役CEO
業界15年目。大学で広告・消費者心理学を専攻後、大手広告代理店でSEO対策、サイト制作、Web広告を統合した戦略設計に従事。これまで大小200社以上のデジタルマーケティングを成功に導く。単なるホームページ制作やSEOの提案にとどまらず、社内の組織づくりから一緒に巻き込み、事業が成長するまで泥臭く伴走するのが得意。認定心理士やワインエキスパートの顔も持つ。最近の悩みは体重増加と体力減少(笑)。