最近パソコンに詳しい若手社員に、ホームページの運用を任せたんだよね
大手の代理店で実績のある優秀なWebマーケターを中途で採用できた!
経営者仲間やお客様が嬉しそうな顔をされて、こんな風に話してくれることがあります。
最新のデジタルツールを使いこなす若い世代や、専門知識を持つプロフェッショナルが自社に加わってくれる。これほど心強いことはありません。経営者や組織のトップとして、大きな期待を寄せるのは当然のことだと思います。私だって、もしそんな人が自社に来てくれたら、めちゃくちゃ期待します(笑)。
でも、数ヶ月後、あるいは1年後、
あれから状況どうですか?
なんか思ったようにホームページの更新が進まないんだよね
アクセスは少し増えたけど、肝心の問い合わせに全くつながらない
担当者が今、何をやっていて何に悩んでいるのか、よく分からん
同じ人ですよ!?あんなに嬉しそうな顔をされてたのに、、、でもこんなやり取りをすることが本当に多いんです。
最終的には、「やっぱりうちの担当者じゃ力不足なのかな」「もっとスキルのある外部の業者に丸投げした方がいいんだろうか」という結論に至ってしまう。
私はこのお話を伺うたび、なんとも言えない切ない気持ちになります。なぜなら、多くの場合、問題の本質は担当者の「スキル」や「やる気」ではないからです。彼らは決してサボっているわけでも、能力が低いわけでもありません。おそらく。
じゃあ、なぜ成果が出ないのか。
長くWeb支援の現場にいてつくづく感じるのは、Webで成果が出ない会社の本質的な原因は、担当者の手前にある「組織の構造」にある、ということです。ちょっと耳の痛い言い方をあえてしてしまうと、経営陣が「丸投げ」してしまった瞬間に、そのWeb戦略の失敗は半分決まってしまっている気がするのです。
今回は、なぜWeb戦略を「一人の仕事」にしてはいけないのか、探ってみたいと思います。
丸投げされた担当者が直面する「3つのすれ違い」
そもそも、なぜ「丸投げ」された担当者は動けなくなってしまうのでしょうか。
孤立した担当者が社内でどのような壁にぶつかり、どんなに孤独な戦いを強いられているか。彼らは、大きく分けて3つの「すれ違い」に頭を抱えています。
① 経営戦略とのすれ違い(”判断基準”が手元にない)
Web担当者は、ホームページの仕組みや、文章の書き方といった「どう伝えるか」のプロ、あるいは得意な人です。でも、彼らは経営者や決裁権を持ったマネージャーではありません。
- 自社はこれから、どの市場で戦っていくのか
- 数ある競合の中で、なぜうちの商品が選ばれているのか
- 今期は、どんなお客様からの問い合わせを最優先で増やしたいのか
こうした、事業の根幹に関わる「経営判断」を下す権限は、当然ながら担当者にはありません。
ところが、ここが曖昧なまま「なんか良い感じにWebで集客して」と丸投げされてしまうケースが本当に多いのです。
判断基準がない担当者は、暗闇の中で「とりあえずバットを振ってみて」と言われているようなものです。そりゃあ迷いますよね。結果として、どこかで見たような一般的なノウハウ記事を量産したり、自社の強みとは関係のないアクセスばかりを集めたりすることになります。
② 社内現場とのすれ違い(”素材と情報”が集まらない)
Webサイトに掲載するコンテンツの中で、最も価値があるのは「現場のリアルな情報」です。
お客様から実際にいただいたお喜びの声、技術者がこだわり抜いた製造の裏側、営業マンが日々商談で聞かれる質問への回答。これらこそが、未来の顧客が本当に読みたい情報であり、Google(検索エンジン)からも高く評価される要素です。
でも、これらの一次情報はすべて、営業部や製造部といった「現場」にあります。
とにかく、Web担当者が一人でパソコンに向かってカタカタとキーボードを叩いていても、生々しい事例や写真は手に入りません。
そこで担当者は、現場の社員に協力を仰ぎに行きます。「ホームページに載せたいので、お客様とのエピソードを教えてくれませんか?」と。ですが、現場から返ってくるのは、「今、現場が忙しいからそのうちね」「それはWeb担当の仕事じゃん、そっちで頼むよ」なんて、往々にして冷たい言葉です。
組織の中でWeb担当者が孤立していると、他部署への協力要請はただの「お願い」になってしまいます。他部署から見れば、Webの更新は自分たちの評価には関係のない「余計な雑務」でしかないからです。こうして担当者は社内営業に疲れ果て、やがて現場へ足を運ぶのをやめてしまいます。これでは、良いサイトなんて作れるはずがありません。
③ 評価基準のすれ違い(”作業”ばかりを見られる)
多くの会社では、Webの専門的なプロセスが社内で共通言語化されていないため、どうしても目に見える「作業量」だけで担当者を判断しがちです。
「今月はブログを何本更新したの?」
「SNSのフォロワーは今何人になった?」
「ホームページのアクセス(PV)は増えている?」
もちろん、これらも指標の一つではあります。でも、前回のコラムでもお話しした通り、アクセス数が増えることと、会社の売上が増えることはイコールではありません。
担当者もそのことは痛いほど分かっています。「もっと問い合わせの導線を改善したいな」「ターゲットを絞った深い記事を1本丁寧に書きたいな」とちゃんと考えていたりします。でも、経営陣から「最近ブログの更新が滞っているじゃないか」と詰められると、評価のために「とりあえず数をこなす作業」に走らざるを得なくなります。
成果につながらない作業を強要され、数字が出なければ責任を押し付けられる。これでは、どんなに優秀な担当者であっても、心が折れてしまうのは時間の問題です。
なぜWebを「一人の仕事」にしてはいけないのか
ここまで現場の断絶について考えてきましたが、そもそもなぜ、これほどまでに他部署や経営陣との連携が必要なのでしょうか。「Webなんだから、パソコンの前で完結させてよ」と思ってしまう心理も、よーく分かります。
でも、Webサイトの本質を考えると、それが構造的に不可能であることが見えてきます。少し想像してみてほしいのです。
皆さんの会社が、新しくリアルなオフィスや路面店をオープンしたとします。そのお店には、受付もいれば、商品の説明をする営業もいて、技術的な質問に答える専門スタッフもいて、最終的な契約を判断する責任者もいますよね。それぞれのプロが連携して、一人の顧客をもてなすはずです。
では、ホームページはどうでしょうか。
ホームページは、デジタル空間における「自社のオフィス」そのものです。24時間365日、休むことなく世界中のお客様を迎え入れる、会社の顔です。それなのに、丸投げの組織では、このデジタルオフィスに「担当者一人」しか配置していない状態になっています。受付から、技術説明、営業のクロージング、さらには経営陣としての信頼性の担保まで、すべてを一人の若手や中途社員に背負わせている。
これ、冷静に考えると、いかに無茶な構造かお分かりいただけるのではないでしょうか。「いやいや、無理でしょ!」って、私なら心の中で突っ込んでしまいます。

Web戦略を成功させるということは、優れたサイトを作ることではありません。サイトを通じて「自社の強みが循環する組織の仕組み」を作ること、これに尽きるのです。
【マネージャー向け】自社の「Web組織孤立度」チェックリスト
ここで一度、皆さんの会社の現状を振り返ってみませんか?
次の5つの質問に、胸を張って「Yes」と言えるでしょうか。少し耳が痛い項目もあるかもしれませんが、自社の状態を客観的に見るためのチェックリストです。
Q1
Web担当者は、営業会議や新商品開発の会議に定期的に参加しているか?
現場の動きや経営の方針が、リアルタイムで担当者に伝わっているでしょうか
Q2
営業マンが商談の席で、「弊社のこのページを見てください」とツールとして活用しているか?
現場がホームページを「自分たちの武器」として認識しているでしょうか
Q3
事例や写真素材の提供が、業務命令として社員全員に浸透しているか?
担当者の「お願い」ではなく、組織の「仕組み」として情報が集まるようになっているでしょうか
Q4
成果を「アクセス数や更新回数」ではなく、「有効な商談数」といった事業成果で評価しているか?
経営課題とWebの目的が、同じ言語で語られているでしょうか
Q5
Web担当者と「作業進捗」ではなく「事業の未来や課題」について最後に話したのはいつですか?
担当者が孤独な作業員ではなく、事業のパートナーとして扱われているでしょうか
いかがでしょうか。
もし「No」が多いと感じたなら、それはやはり、担当者のスキルの問題ではなく、組織としてWebを孤立させてしまっているサインです。でも、落ち込む必要はまったくありません。逆に言えば、この構造を見直すだけで、今いる担当者のパフォーマンスが見違えるほど跳ね上がる可能性すらあります。
Webが機能している会社がやっている「地味な巻き込み方」
では、Webを孤立させず、全社で成果を出している中小企業は、具体的に何をしているのでしょうか。何か莫大な予算を使って、大きなプロジェクトチームを立ち上げているのでしょうか。
実は彼らがやっていることは、驚くほど「地味」で泥臭い取り組みばかりです。日常のコミュニケーションの延長線上に仕組みを作っています。
社長が「Webは経営課題である」と言明している
最も重要なのは、社長のスタンスです。成果を出している会社の社長は、「Webのことは彼に任せてあるから」とは絶対に言いません。全社会議などの公の場で、全社員に向けてこう発信します。
「これからの我が社の成長において、Webは最重要の取り組みである。だから、Web担当者が情報を取りに行ったら、全員が最優先で協力してほしい」
社長がこうやって「お墨付き」を与え、Webの重要性を社内に位置づけるだけで、他部署の対応はガラリと変わります。担当者にとっては、これ以上ない強力な後ろ盾になります。
営業トップとWeb担当者の「週1回15分の情報交換」
弊社がご支援しているとある企業では、毎週月曜日の朝に、営業部長とWeb担当者が15分だけ立ち話をしています。話す内容はシンプルです。
「先週、営業先でどんな質問を多くされました?」
「最近のお客様は、どんなキーワードに反応するんですか?」
「今月受注したA社さんは、うちのどこを気に入って契約してくれたんですか?」
これだけです。Web担当者は、この15分の立ち話から「次に書くべきブログのテーマ」や「ホームページに新しく追加すべきQ&A」のヒントを得ているそうです。営業現場で実際に刺さった話や顧客の悩みをそのままWebに反映するからこそ、そのサイトは競合他社よりも圧倒的に「顧客に響くサイト」に育っているのです。
他部署の「評価制度」への組み込み
情報の提出を個人の善意に頼るのをやめ、組織のルールにしてしまうのも賢い方法です。
例えば、弊社のお取引先様の建築会社では、現場監督の評価指標の中に「工事進捗の写真を月に5枚、Web担当者に提出すること」という項目を正式に組み込んだ事例があります。
これがルールになれば、現場監督にとって写真は「余計な雑務」ではなく「自分の大切な業務」になります。担当者が頭を下げて回らなくても、自然と良質な素材が社内から集まる仕組みができあがったのです。
AI普及期だからこそ、全社を巻き込めない企業の発信は「無に還る」
そしてこの問題をさらに深刻にしているのが、最近のAIの普及です。
ここからは、現在のWeb環境を踏まえた、少し未来の話をさせてください。なぜ今、これほどまでに「組織での取り組み」が重要になっているのか。その理由は、生成AIの爆発的な普及にあります。
ご存知の通り、今はAIを使えば、「それっぽい綺麗で論理的な文章」や「一般的なSEO記事」は、一瞬で、しかも大量に作れる時代になりました。パソコンの前から一歩も動かなくても、それなりのWebサイトのコンテンツは埋められます。つまり、「情報発信のハードル」が限りなくゼロになったのです。
でも、これは同時にちょっと恐ろしい未来を意味しています。誰もがAIを使って似たような、どこかで見たことがあるような「綺麗なだけの情報」を大量にネット上に垂れ流すようになった結果、それらの価値は相対的に暴落し、誰にも読まれなくなっている(=無に還る)のです。検索エンジンも、そうした情報を厳しく排除し始めています。
では、このAI時代に、私たち中小企業が大手や競合に勝てる発信とは何でしょうか?それこそが、先ほどからお伝えしている「社内の生々しい一次情報」です。
自社の営業マンが、汗をかきながら顧客と向き合う中で聞いた「生の声」
泥臭い製造現場で、職人が何年もかけて培ってきた「独自のこだわり」
自社のサービスを使ったお客様が、涙を流して喜んでくれた「リアルなエピソード」
これらは、どれだけAIが進化しても、インターネット上のどこを探しても絶対にデータとして存在しません。皆さんの会社の中にしか存在しない、唯一無二の資産です。
一人の担当者が、パソコンの前でAIを叩いてひねり出した文章には、もう価値はありません。現場の社員を巻き込み、社内の泥臭いリアルをすくい上げて、初めて言葉に熱量が宿り、検索エンジンにもユーザーにも選ばれる「信頼されるWebサイト」になるのです。
全社を巻き込める会社にとって、AIは担当者の作業を効率化してくれる最高の相棒になります。しかし、丸投げを続けて社内から情報を集められない会社にとっては、AIがあっても薄っぺらい情報しか発信できず、ネットの海に沈んでいくことになります。それって、なんだか寂しいですよね。
担当者を育てるのではない。Webが動く「組織」を作るのが経営層の仕事
ホームページ制作を依頼する。優秀な担当者を雇う。SEO対策を外注する。これらはすべて、Web戦略を前に進めるための手段にすぎません。
担当者が「メタルキングの剣」や「エクスカリバー」(注:最強の武器)を手に入れても、それを扱う担当者が社内で孤立し、経営戦略から切り離され、現場からの情報も遮断されている状態では、その武器はただの鉄くずになってしまいます。
成果が出ない原因を担当者個人のせいにしている間は、どれだけ人を入れ替えても、どれだけ制作会社を変えても、きっと同じ失敗を繰り返してしまいます。
耳が痛い話だったかもしれませんが、この記事を通してお伝えしたかったのは、Webの成否を握っているのは、実はこの記事を読んでいるあなた自身の組織作りの姿勢である、ということです。
Web担当者の仕事は、ホームページのコードを書くことや、記事を更新することだけではありません。会社の強みを集約し、Webという鏡を通じて社会に正しく届ける、非常にクリエイティブで、事業貢献度の高い仕事です。
彼らがその本来の力を発揮できるように、進むべき道を指し示し、他部署を巻き込む権限を与え、全社でWebを育てる文化を作る。それこそが、経営者やマネージャーにしかできない、本当の「Web戦略」なのだと思います。
この記事を読んだ後に考えてみたい3つの質問
最後に、この記事を読んでくださったあなたに、ぜひ考えてみてほしい3つの問いかけを置いておきます。
皆さんの会社のWeb担当者は、今、社内で「孤独」になっていませんか?
現場の社員は、ホームページを「自分たちの営業を楽にしてくれる味方」だと知っているでしょうか?
明日、Web担当者の方に「最近、現場の情報で困っていることはない?」と、声をかけてみませんか?
すぐに組織が変わらなくても大丈夫です。まずは、この記事を読んでいるあなたが担当者のデスクへ足を運び、「最近どう?」と声をかけて、その声に耳を傾けることから、すべての成功は始まりを告げるのだと、私はそう思います。
もし、社内だけで変えるのが難しいときは
とはいえ、長年続いてきた社内の空気や組織の仕組みを、社長やマネージャー一人の力で急に変えるのって本当に大変ですよね。「Web担当者と他部署の間に立って、うまく交通整理をしてくれる人がいればいいのに……」と思うこともあるかもしれません。
そんなときは、私たちWebminare(ウェブミナーレ)を頼ってください。私たちは単にホームページを作るだけでなく、担当者の方が社内で孤立せず、全社を巻き込んでいけるような「組織の土台作り」から一緒に伴走しています。社内だけで抱え込まずに、まずは気軽な相談相手として声をかけてもらえると嬉しいです。
