金曜の夜、ようやく一週間の仕事を終えて、自宅でビールでも飲みながらNetflixを開く。きっと多くの方が楽しみにしているリラックスタイムだと思います。私もそれを楽しみに毎日仕事をしています(笑)。
ところが。
「話題の新作」をなんとなくスクロールし、「あなたへのおすすめ」を眺め、予告映像だけ見ながら次から次へ探し続ける。何を観ようかあれこれ悩んでいる間にもビールだけはどんどん進むのですが、肝心の観たい映画が一向に決まらない。気付けば30分が過ぎ、2缶目を開ける頃になってもまだトップ画面のまま。なんとなくスマホをいじり始め、気付いたら遅い時間になっている。
こんな経験、ないでしょうか。私は今年に入って少なくとも3回は経験済みです。
この記事は、いま画面の前で「分かるわ〜」と頷いてくれたあなたにぜひ読んで欲しいと思って書いています。
おそらく誰もが一度は経験したことのある「ネトフリ迷子」。今回はこの謎について、心理学や脳科学の側面から皆さんと一緒に考えていきたいと思います。
実はここに、あなたのホームページの成約率を劇的に変える重大なヒントが隠されているのです。
人は選択肢が増えるほど、動けなくなる
心理学では、選択肢が増えすぎることでかえって人が行動できなくなる現象を 選択のパラドックス と呼びます。
選択肢が増えれば増えるほど、脳は比較や判断に多くのエネルギーを使い、最終的には「何も選ばない」という結論を下してしまうことがあるのです。
たくさんある選択肢の罠「ジャムの実験」
この記事のアイキャッチを見て、「なんでジャム?」と思われた方もいたかもしれません。実はあのアイキャッチに並んでいるジャムに、今回お伝えしたいことが詰まっています。
私が心理学に興味を持つきっかけにもなった、「ジャムの実験」と呼ばれる有名な心理学の実験があります。
あるスーパーの試食コーナーで、
24種類のジャムを並べた日
6種類のジャムを並べた日
この2パターンを用意し、お客様の購買行動を比較しました。
24種類並んでいる方が「選ぶ楽しさ」があってなんとなく売れそうですよね。実際に、ワクワク感に惹かれて試食コーナーで足を止めた人の数は、24種類並べた日の方が圧倒的に多かったそうです。
しかし、実際にジャムを購入した人の割合は、6種類しか並べなかった日の方が「10倍」も多かったのです。

つまり、人は選択肢が増えるほど満足するのではなく、選択肢が増えるほど決断できなくなる。これが脳のシビアな現実です。
ネトフリ迷子で起きているのは「決断疲れ」
では、なぜそんな不条理なことが起きるのでしょうか。話を、金夜のNetflixの画面前に戻してみます。私たちはのんびり映画を探しているようで、実は脳内では、
これ、本当に面白いかな?
せっかくの休日なのに外したくないな
他にもっと面白そうなのがあるかも…
と、作品のサムネイルを一つ見るたびに、「比較」「迷う」「判断」「また比較する」という意思決定を無意識に繰り返しているのです。
このように、決断を細かく繰り返すことで脳のエネルギーがガリガリと消耗していく状態を、心理学では決断疲れと呼びます。アップル創業者のスティーブ・ジョブズさんが、この決断疲れを避けるために毎日同じ黒のタートルネックを着ていたのは有名な話ですよね。
Netflixで何を見るか決まらないのは、あなたの優柔不断さのせいではありません。選択肢が多すぎるせいで、脳が「もう今日は考えたくない」と情報処理を停止しているだけです。
つまり、「ネトフリ迷子」とは、意思の弱さではなく、脳の正常な防衛反応なのです。
あなたのホームページ、ジャムが24個並んでいませんか?
このジャムの実験、世の中の中小企業のホームページでも、全く同じ構造の機会損失が日常茶飯事のように起きています。言い換えると、多くのサイトは顧客に親切にしようとするあまり、情報を詰め込みすぎています。
ここで、あなたのホームページを思い浮かべてみてください。以下のような「24個のジャム」を並めて、ユーザーを迷子にさせていませんか?
□ トップページに「ニュース」「ブログ」「事例」「SNS」がすべて同列で並んでいる
□ お問い合わせボタンの横に「資料請求」「メルマガ登録」「LINE追加」が乱立している
□ メインメニュー(ナビゲーション)の項目が7つ以上ある
□ 自社の強みを「10個」箇条書きでアピールしている
□ 結局、一番最初にどこをクリックすればいいのか初見でわからない
「せっかくアクセスしてくれたんだから、あれもこれも見て欲しい!」という経営者の親切心とサービスへの自信。めちゃ分かります。ただ、これがサイトに訪れた見込み客の脳のメモリを食い潰している元凶になっていることが本当に多いのです。
メニューやボタンといった「選択肢」を無計画に増やせば増やすほど、顧客は選ぶことが面倒になり、そのままあなたのサイトを閉じてしまいます。
Webminareが考える「引き算の科学」
顧客を迷子にさせず、最短ルートでお問い合わせへ導くために、私が提唱しているのが「引き算の科学」という設計思想です。
例えば、「ホームページにたくさんの商品をのっけて、魅力も全部伝えたいんですよ」なんてご相談をいただくことがあります。そのお気持ち、本当によく分かります。でも、その”全部見せたい”という親切心が、お客様を迷わせてしまっているケースを、私はこれまで何度も見てきました。
ホームページの役割は、情報をたくさん載せることではありません。「この会社なら安心できそうだ。」 「まずは相談してみよう。」その一歩を踏み出してもらうことです。
一般的なWebマーケティングでは、他社との差別化を意識するあまり、コンテンツや保証、特典などを次々と足していきます。しかし、情報があふれる今の時代では、それは顧客に「選ぶための仕事」を増やしているだけかもしれません。
だから私たちは逆に考えます。
- 不要な情報を削る。
- 迷うポイントをなくす。
- 次に押すボタンを一つに絞る。
こうして、お客様の思考コストを限界まで減らしていく。これが、私が「引き算の科学」と呼んでいる考え方です。
明日から実務にすぐ取り入れられる3つの改善
では、どうすればお客様の「迷い」を解消させられるのか?
今回は、あなたのサイトを選択肢の罠から脱却させ、迷わせない導線を構築するための具体的な3ステップをご紹介します。
1. 視線のゴールに「出口(CTA)」を1つだけ配置する
ユーザーの視線は、画面を左上→右上→左下→右下と「Z」の文字を描くように動く特性があります。この視線のゴールである右上、またはスクロールした最下部に、あなたが最もクリックしてほしい「本当の出口(例:無料見積もり)」だけを大きく配置してください。
2. メインメニューはマジカルナンバー「4」に収める
人間が短期的に記憶・処理できる情報の塊は「4±1(マジカルナンバー4)」と言われています。ヘッダーのメニューが乱立しているなら、今すぐ重要な4つ(サービス概要、実績、価格、問い合わせなど)に絞り込んでみてください。残りはフッター(サイトの最下部)に整理すれば十分伝わります。
3. ファーストビューから「1スクロール以内」に最初の行動を促す
サイトを開いた瞬間に見える画面(ファーストビュー)で、「この会社は何を解決してくれるのか」を簡潔に言い切り、そのすぐ下にボタンを置いてください。ユーザーに「下までスクロールして探させる」という労働を強いた時点で、離脱のカウントダウンは始まっています。
ユーザーフレンドリーとは、顧客の脳に汗をかかせないこと
Netflixであれば、ユーザーを30分迷わせても画面の前に留まらせることができます。それは、すでに料金を支払って契約しており、「ここでしか見られない作品がある」という圧倒的な独占権を握っているからです。
しかし、まだ契約もしていない、他社と比較されている段階の企業ホームページにおいては、その30分は絶対にありません。「他でもいいかもしれない」という状態のまま、あなたのサイトで少しでも「迷い」や「選ぶ労働」を感じたその瞬間に、お客様は静かにブラウザを閉じます。
だからこそ大切なのは、情報をただ増やすことでも、デザインを派手にすることでもありません。他社ではなく「あなたの会社」に相談すべき理由を、脳にストレスを一切与えない美しい導線で伝えてあげること。それこそが、成果につながるUI/UXの本質なのです。
この記事を読んだ後に考えてみたい3つの質問
ホームページを開いたとき、3秒以内に「次に何をすべきか」が直感的にわかりますか?
コンバージョンエリアに、ユーザーを悩ませる「複数の選択肢」が並んでいませんか?
今のサイトを見て「探すのが面倒だから後でいいや、と離脱しない」と言い切れますか?
もし、3つの質問に答えてみて「うちのサイト、お客様を迷子にさせているかもしれない…」と少しでも不安を感じたなら、それは自社サイトの伸び代に気づいた証拠です。
どこをどう引き算して、お客様の思考コストを減らすべきか。もし社内だけで判断がつかない場合は、まずは現状のサイトをそのままWebminare(ウェブミナーレ)に見せてください。顧客心理から逆算し、思考コストを減らすWeb戦略を一緒に考えていきましょう。
そのついでに、Netflixのおすすめ映画も教えてください。
ただし、4本まででお願いしますね。おすすめが多すぎるとこの記事の内容が台無しになっちゃうので!笑
