うちの会社の強みって、一体何だと思う?
経営計画の発表前や、ホームページのリニューアルを検討するとき、あるいは新しい採用パンフレットを作ろうとするとき。ふと思い立って、会議室で社員たちにこんな質問を投げかけてみたことはないでしょうか。
(シーン……。)
さっきまで賑やかだった会議室が、一瞬で凍りついたように静まり返る。 社員たちは急に手元の資料を熱心に読み始めたり、パソコンの画面に目を落としたりして、誰も質問したあなたと目を合わせようとしない……。
……どうでしょうか。 そんなシーンを考えたり、思い出しただけでゾッとしますよね。これ、実は多くの中小企業での「あるある」で、私もそんなシーンを何度も見てきました。
「毎日こんなに頑張って会社を引っ張っているのに、みんな自社の良さをこれっぽっちも分かっていないのか」と、経営者やマネージャーが寂しく、そしてがっかりしてしまう気持ちもよく分かります。
でも、安心してください。 結論から言うと、会議室がシーンとなったのは、あなたの会社に「強みがないから」では絶対にありません。むしろ逆です。
私は、長年存続している会社で強みがない会社なんてこの世に1社も存在しないと考えています。
もし本当に強みがゼロなら、今月のお給料を社員に払うことすらできずに、とっくに会社は倒産しているはずだからです。今、会社が続いてお客様に選ばれているという事実そのものが、何よりの強みの証明なんです。
じゃあ、なぜ社員たちは答えられなかったのか。
今回は、そんな会議室の切ない沈黙を解き明かしながら、本当の意味での「自社の強みの見つけ方」について、皆さんと一緒に考えてみたいと思います。
なぜ、社員は「自社の強み」を答えられないのか?
まず、あの会議室の気まずい沈黙の正体について、少し視点を変えて考えてみましょう。 なぜ社員たちは、あんなにもフリーズしてしまったのでしょうか。
理由はとてもシンプルです。
多くの場合、社員にとって自社の強みとは「あまりにも日常すぎて、わざわざ言葉にする必要すら感じない当たり前のこと」だからです。
ここに、経営層と現場の「認識のすれ違い」があります。 この記事を読んでいるあなたが「うちの強みは?」と社員に聞くとき、頭の中ではどこか「他社を圧倒するような、目新しい最新技術」とか「特許レベルの独自のこだわり」「どこにも負けない地域最安値」といった、分かりやすくてドラマチックな何かを期待してしまっていませんか?
質問された社員たちも、同じように考えてしまいます。 「何かものすごい、それっぽいことを言わなきゃいけないんじゃないか……」 そうやってお互いにハードルを勝手に上げてしまうから、何も言えなくなってしまうのです。
お客様で実際にこんなケースがありました。
昔、弊社でご支援していた、とある印刷関係のお客様で、お客様からのご依頼に対して、どんなに忙しくても「必ず2時間以内に見積もりを返す」というルールを徹底している会社がありました。
社長が会議で「うちの強みは?」と聞いたとき、現場の若手社員は誰も「2時間以内の見積もりです!」とは言いませんでした。なぜなら、彼らにとっては「遅れたら社長に怒られるから、必死になって2時間以内に返しているだけのしんどい日常の業務」でしかなかったからです。強みどころか、むしろ「しんどいからもっと締め切りを伸ばしてほしい」くらいに思っていた内容でした。
でも、お客様の側から見たらどうでしょうか。
相見積もりを取った競合他社からは「2日後に送ります」と言われているのに、その会社だけは2時間後にビシッと正確な見積もりが届く。これって、発注側からすれば「仕事が早くて、圧倒的に信頼できる最高の強み」ですよね。
そうなんです。「現場にとっての当たり前の日常」と、「顧客にとっての圧倒的な価値」は、驚くほど一致していたんです。
社員が答えられなかったのは、彼らが自社の素晴らしい工夫を「ただの日常」として、誠実に、当たり前にやり遂げている証拠でもあるのです。そう考えると、あのシーンとした沈黙も、少し愛おしく思えてきませんか?笑
広告心理学から見る「強み」の本当の定義
ここで、私の専門である広告心理学・消費者心理学のレンズを使って、「強み」という言葉の裏にある人間の心理に迫ってみたいと思います。
多くの会社がホームページを作るとき、競合他社のサイトを熱心に研究します。そして、「あそこが『短納期』を謳っているから、うちは『高品質』で行こう」とか、「向こうが『実績多数』なら、うちは『親切丁寧』だ」というように、ライバルとの引き算や足し算で強みを作ろうとします。
でも、これって心理学的に見ると、完全にベクトルの向きが間違っているんですよね。
なぜなら、「強み」を決める権利は、あなたにも、ライバルの会社にもなく、100%「お客様の頭の中」にしかないからです。
お客様が皆さんの会社の商品やサービスを買うとき、頭の中でどんなセンサーが働いているでしょうか。 人は、「世界で一番優れたもの」を探して買っているのではありません。自分の目の前にある「特定の悩み」を、一番ストレスなく、安心して解決してくれそうな相手を選んでいるだけなんです。
これを心理学では「知覚価値(Perceived Value)」と呼びます。 どれだけ製品のスペックが高くても、お客様が「それって自分にどう関係あるの?」と感じてしまえば、価値はゼロです。逆に、どんなにありふれた製品であっても、「この会社は、私のこの細かい面倒くささを分かってくれている!」と感じてもらえれば、それはそのお客様にとって、世界で唯一の強力な強みになります。
「強みがない」という麻痺から抜け出す、3つのアプローチ
では、会議室の沈黙を破り、社内に眠っている「本物の強み」をすくい上げるには、具体的にどうすればいいのでしょうか。パソコンの前で一人で悩むのをやめて、今すぐ試せる3つの具体的なアプローチをお話しします。
アプローチ①:明日、一番仲の良いリピーターに電話してみる
社内でいくら会議を重ねても、強みは見つかりません。なぜなら、全員が「日常に麻痺」しているからです。 一番手っ取り早くて確実なのは、皆さんの会社を愛してくれている既存のお客様に、直接聞いてしまうことです。
明日、長年付き合いのある気心の知れたお客様に、こんな風に電話か商談のついでに聞いてみてください。
〇〇社長、いつもありがとうございます。実は今、うちのホームページを見直していまして。
ぶっちゃけたお話、数ある同業者の中で、なんでうちとずっと付き合ってくださっているんですか?
うちのどこが気に入ってます?やっぱり技術力ですか?
すると、お客様からは、社長の想像とは全く違う答えが返ってくることが本当に多いのです。
え? 技術力もそうだけどさ、〇〇さんのところって、こちらの無茶振りを『無理です』って突っぱねずに、
まずは『どうすればできるか一緒に考えましょう』って言ってくれるじゃん。
あの感じが、うちとしては一番助かっているんだよね。
これです。社長自身が「うちの技術力は〜」とアピールしようと思っていた裏側で、お客様は「一緒に悩んでくれる姿勢」に100倍の価値を感じていた。 お客様からいただいたこの生々しい言葉こそが、ホームページのトップ掲げるべき、競合他社が絶対に真似できない「本物の強み」になります。
アプローチ②:「失敗を避けるためにやっている、地味な工夫」を書き出す
「強み」を探そうとすると、どうしても「プラスアルファの凄いこと」ばかりに目が向きます。でも、お客様にとってそれ以上に価値があるのは、「マイナス(失敗やトラブル)を徹底的に防いでくれる安心感」です。
現場の社員たちに、こんな問いかけをしてみてください。
「うちの仕事で、お客様に絶対に迷惑をかけないために、みんなが現場で気をつけている『地味な決まり事』って何がある?」
施工現場を出るときは、必ず3分間、清掃をしてから帰るようにしています
お客様からのメールには、内容が確定していなくても
『確認しました、本日17時までに回答します』と、まずは15分以内に一次返信を入れています
デリケートな部品なので、梱包するときは他社の2倍の緩衝材を使って、
箱の中で絶対に動かないようにしています
これらは、現場にとっては「当たり前にやらされている、ちょっと面倒なルール」かもしれません。でも、ユーザーの視点から見れば、「現場がいつも綺麗な会社」「レスポンスが早くて不安にならない会社」「配送トラブルがなさそうな会社」という、立派な選ぶ理由になります。
プラスの凄さではなく、マイナスを出さないための「地味な誠実さ」。これこそが、中小企業が誇るべき最高の資産です。
アプローチ③:競合他社の「クレーム」を調べる
ちょっと意地悪な方法に聞こえるかもしれませんが、これも心理学を応用した非常に効果的なアプローチです。 ネット上のレビューサイトやSNSで、皆さんのライバル企業の「口コミ」を調べてみてください。特に注目すべきは、星1つや星2つの「低評価・クレーム」です。
商品は良かったけれど、営業マンの態度が冷たかった
見積もりを頼んでから、手元に届くまで2週間も待たされた
アフターサービスに電話をしたら、たらい回しにされた
こうしたクレームは、「市場の顧客が、今まさに不満に感じていて、本当に求めているニーズ」の塊です。
その競合の弱点を見たあとに、自社の現場を振り返ってみてください。 「あれ? うちの営業マンって、みんな大人しくて不器用だけど、お客様の話はめちゃくちゃ親身になって聞くよな」 「うちは見積もり、遅くとも翌日には出してるぞ」
ライバルがお客様をガッカリさせているそのポイントを、皆さんの会社が「普通に、当たり前に」クリアしているとしたら……。それだけで、その市場において、自社が語るべき強みが明確になりますよね。他社の弱点という背景があって初めて、自社の日常が「鮮やかな強み」として浮かび上がるのです。
まとめ:強みとは、作るものではなく「気づく」もの
「うちの会社には、他社に誇れる強みなんてない」 もし明日から、またそんな弱気が顔を出しそうになったら、この記事でお話ししたことを思い出してください。
社長やマネージャーがその「当たり前の価値」に気づき、誇りを持ってホームページの言葉に落とし込んだとき、皆さんのサイトは他社が絶対に真似できない、唯一無二の輝きを放ち始めます。
今度の会議では、「うちの強みは何?」と聞くのを、少し変えてみませんか。 「最近、お客様に一番喜んでもらえたことって、何があった?」と。 きっと今度は、シーンとなることなく、生き生きとしたディスカッションが始まると思いますよ。
この記事を読んだ後に考えてみたい3つの質問
皆さんの会社で、社員が「当たり前すぎて業務の一部だと思っている地味な工夫」は何ですか?
ここ1年で自社を選んでくれた新しいお客様は、
ホームページの「どの言葉」を信じて問い合わせてくれたのでしょうか?
明日、社内で一番社歴の長い現場スタッフに、
「うちの仕事で、ここだけは譲れないこだわりってどこ?」と、世間話ついでに聞いてみませんか?
自社の「強み」を一緒に見つけませんか?
自分の会社のことって、近すぎて客観的に見られない…
お客様に選ばれている理由はなんとなく分かるけれど、
それをどう文章で表現したらいいか分からない
そんなときは、私たちWebminare(ウェブミナーレ)と一緒に壁打ちをしましょう。 私たちは、単にホームページを制作するだけの業者ではありません。実際に皆さんの会社にお邪魔し、社長や現場の社員の皆さんとじっくりお話をしながら、日常に埋もれてしまっている「貴社だけの本物の強み」を一緒に掘り起こしていきます。
社内の会議室で悩むのを一度やめて、まずは気軽な相談相手として。いつでもご連絡お待ちしております!
